「それからはスープのことばかり考えて暮らした」 吉田篤弘

それからはスープのことばかり考えて暮らした
引越し先の大家さんにオーリィさんと呼ばれることになった大里君。
街のはずれに素朴でおいしいサンドイッチ屋さんを見つけて
通うようになるうちに、店主とその息子メガネ君とも仲がよくなる。
無職だった彼はそのサンドイッチ屋で誘われ働くことに。
大いに流行っていたその店だったが、駅前に新しいコーヒーショップが
できてからは客足が減って解決策でスープも出すことに。
オーリィ君がスープの担当になるのだが。


オーリィ君の部屋からは目の前の教会が見えて、
部屋の窓から天気がいい日にゆっくりと煙草をくゆらせて
のんびり外を見るなんて、煙草をすわない私にもとても魅力的だ。


サンドイッチの描写もとてもおいしそうだし、出てくる人も悪い人がひとりも
いなくて、読んでいても安心できる。

サンドイッチ屋は「トロワ」という名前なのだが、店主が安藤なので、
アンドウトロヮでトロワというのもかわいい。
お店の経営を過去2回も失敗しているお父さんのためか、
教会の前で祈るメガネ君を思いがけず見かけるシーンは
説明は一切ない分映像として印象に強く残った。


なんてことはない物語なのだが、おしゃれだし、読後感のいい本だった。