「そして、警官は奔る」日明恩

そして、警官は奔る
人身売買で手に入れた小さな東南アジアの女の子を飼っているのを見つけられ逮捕された男。彼の家からは幼児ポルノがたくさん発見された。女の子の母親を捜し、幼児ポルノのビデオに写る子供たちを捜し始める警官の武本とは「冷血」というあだ名の和田がコンビを組んでいる。彼は徹底的に犯人を心理的に追い詰めて自供させる。一方温情ややさしさこそが人に罪を認知、後悔させることができるというのが心情の小菅の協力も得て捜査をすすめるうちに、不法滞在の母親から生まれた国籍もない子供たちを預かるのぞみという若い女性と知り合う。そこでは引退した元エリート医師の辻岡が一緒に面倒を見ていた。そしてそこは非合法の施設だった。


前回警察を辞め、国家公務員I種試験に合格してまもなく警察に戻ることになる潮崎も武本の前に現れ付きまとう。お弁当を作っては武本に届けるのだが、作っているのが母や「兄」ってのがいい。


「可哀想な自分、可哀想な人やものに優しい自分・・・。可哀想ってみんな大好きよね。でも本当は可哀想ってこと自体がすきなんじゃなくて、自分が大好きなだけなんだけど」というのぞみのセリフは痛い真実を衝いている。確かにエゴイスティックだが人間は誰かにいつも必要とされたいと思っている。誰かの役に立っていると感じていたい。それが必ずしも悪いことではないと思うのだが。なんとなくうまく言えないが、自己中で奉仕的でそれは表裏一体なのだ。