「暗闇の中で子供」 舞城王太郎

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)
前回の殺人事件の傷も癒え切れない奈津川家をまた事件が襲う。奈津川家シリーズ第二弾で今回の語り部は三男の三郎だ。


三郎は背が高くハンサムで、腕っ節も強く、塾経営のかたわらミステリー作家として本も出しそこそこ売れたりしている。BMWに乗り、ラフマニノフのピアノコンチェルトを魂を込めて弾く。なんてすごい人のようだが、奈津川家では一番パンチのない凡人だ。


前回の連続主婦殴打生き埋め事件の模倣をしたような事件が起きる。ある日美しい女の子がマネキンの頭に袋を被せて田んぼに埋めているのを目撃する。その少女ユリオのボーイフレンドも惨殺され、次々と事件が起こり、三郎を巻き込んでいく。まだアメリカに帰っていない四朗とガールフレンドのアテナとともに事件を追っていくうちに、入院中の母親は失踪し、四郎も車にはねられて重症となり、三郎にも・・


今回も暴力シーンがこれでもかってほどに満載でちょっと辟易するが、語り部が三郎ということで、文体も前回よりも落ち着いていて読みやすくなっているし、穏やかな印象がする。二郎の影がちらちらと出てきてすごく気になるが、きちんとした形で出して読者を安心させてはくれない。


本来すべての謎が解決されるべき後半で、謎があちこちにほっぽり投げられそのまま終わりになってしまっているので、なんだかすっきりしない。三郎もどうなっているのかよくわからないし・・どうなの〜!?


四郎が意外にバランスのとれた大人の常識人らしい描写がありちょっと驚く。さすが四郎や。でもやはり続きが読んでみたいな〜。あのあとどうなったの?ところで三郎はなんとなく佐々木蔵之介を思い出してしまった。