「春、バーニーズで」 吉田修一

春、バーニーズで

春、バーニーズで


吉田修一は好きなのに、このところ読んでない。「最後の息子」の続編のようなものが載っていると聞いて興味をもって手に取った。


筒井は「最後の息子」でおかまと住んでいた男の子。今は子持ちの女性と結婚して堅気な生活をしている。彼がバーニーズに家族と買い物に行ったら、昔一緒に住んでいたおかまとばったりと会う「春、バーニーズで」、息子と出かけたマックでたまたま同席した女子高生との交流を描く「パパが電車をおりるころ」、友人の結婚式に地方に出かけ泊まったホテルでの夜の話「夫婦の悪魔」、朝ふと思って会社に行かずに、誰にも連絡せずに日光に出かける「パーキングエリア」、昔の彼女との楽園についての会話がふと思い出された「楽園」が入っている。


どのお話もいい話だ。描写がたくみと思うのは、こどもがポテトを横にして口にいれるとか、小さな子供がちょこちょこと離れていくのを阻止するために父親が足を伸ばして行く手を阻んだり、金谷ホテルの描写で一日を一年かけて過ごしているような落ち着きと言ったり、日常的で易しい表現だがぴったりとくる。


本を読んでいて筒井はとてももてる男性なのだろうなと思った。彼の奥さんも大人でとても魅力的なんだろう。ところで子供といると相手が警戒心を解くので、子供といるとナンパし放題というのは、大きくうなずく。これはペットを連れているときにも適用できる。