「照柿」 高村薫

照柿
合田刑事のシリーズ2弾。
たまたま乗り合わせた電車で、駅でもみ合う男女が見え、女が線路に落ち死亡。その二人を追ってきた女が逃げていくのを追いかけ声を掛ける合田刑事。本来求めるべき任意同行をなぜか言えないまま、連絡先だけを聞いて別れる。その数日後東京駅でその女と一緒にいた男はなんと合田とは18年ぶりにあった幼馴染の達夫だった。一度あっただけの女なのに、彼女と一緒にいる達夫に激しい嫉妬を感じる合田。3人の関係を軸に達夫の勤める工場での事故、合田の担当する事件などが同時に進んでいく。そして達夫はある日たまたま訪ねた亡き父の知人の画廊で画廊主を殺してしまう。

今回は刑事としての合田より私人としてによりフォーカスしているからだろうか、「レディジョーカー」でも「マークスの山」でも「合田」と表記されているのに、ここでは「雄一郎」で進んでいる。実際、被疑者の一人である美保子に一目ぼれをして、彼女の恋人でもある幼馴染の達夫に嫉妬したり喧嘩を吹っかけたりしているわけだが、そんなに入れ込むのはあまりに唐突に感じられ、不自然に感じられた。

義兄の加納が合田を呼ぶときには「おまえ」で、一方合田は加納を「あんた」と呼ぶ。この言い方ひとつ見ても微妙に義兄は立場が上なのかしらと思う。

情報収集のために賭場に顔を出していた合田と知り合った秦野組長がクールでちょっとイジワルでかっこいい。

ダンテの「新曲」の引用がちょっとあったが、すこしだけ興味が出た。でも読まないんだろうな〜、私。