「マークスの山」 高村薫

マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)
関連のないと思われた殺人事件である大学の元山岳会のメンバー達が浮かんでくる。事件を追う本庁の合田雄一郎は、16年前に南アルプスであった別の殺人事件に出会い、連続殺人の犯人は精神に「暗い山」を抱える「マークス」にぶつかる。

レディ・ジョーカー」の時は標準語だったのでわからなかったが、合田は本当は関西人でこの本と「照柿」では主に関西弁でしゃべっている。そしてここでの合田はちょっとごつい印象だった。

「マークス」こと水沢は、小さな頃両親がアルプスで無理心中を図り、車の中から自分だけ逃げ出せて助かった経緯があるのだが、一酸化中毒になり、精神病にかかり病院にしばらく収容されていた。そのとき親切に世話をしてくれた看護婦真知子とその後暮らすことになる。平気で残忍に人を殺す水沢だったが、真知子との場面ではとても素直で可愛らしいところがあり、そのギャップに驚く。美形の彼は不思議な魅力がある。

東大出身なのにノンキャリの合田。東大出身者はみんなキャリアになるのかと思っていたのでびっくり。それにしてもちょっと前とはいえ、30代で手紙に「小生」とか書くかな〜と気になった。