「春の雪」 三島由紀夫

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)
昔絶対買ったのに読みたくなったときに見つからない。
仕方ないので図書館で借りることにした。
三島由紀夫は気付くと何作品が買っているのだが、読後感があまりよくなく「すごい感動〜」ってことにはならない。なんか必ず意地悪な人が出てくるのが嫌なんだろう。

でも今回はそんな癖が気にならなく読めた。
大正初期という時代背景で御所風の伯爵家などが残っているのも風情があっていい。綾倉家の聡子の父がなにか重大な危機が起きてもおろおろとするばかりで何もしないというのもむしろ御所風の育ちを感じさせる。その一方で清顕の父親松枝はどんどんと仕事をこなしていくのも今風の貴族といった感じだ。

タイから留学している王子達の日本の去り方もほろにがく、学習院でもあまりなじめなかったというのも物語りに厚みを加えている気がした。彼らの描写にきちんと敬語を使っているのも上流階級を感じる。

以前読んだのにほとんど内容はあまり記憶になかったが、蓼科が綾倉伯爵に聡子が大人になったら松枝の持ってくる縁談にただ答えるのでなく、影で聡子の好きな人と逢引する機会をこっそりと作る手伝いをして松枝に復讐したいという話はおぼろげに覚えていたな・・・

とりあえずこれは本多との話が中心だよな〜、絆だってずっとこっちとの方が強いしね。
聡子との恋愛は彼女が好きというより禁忌を犯すことで気持ちが盛り上がっただけの彩り的要素が高い気がしてしまう。

読むにつれ清様は窪塚君にやってほしかったなと思うが、映画はチャンスがあったら見てみたい。友達の感想に寄ると脇役達はかなりはまっているということだったし、映像がきれいのようなので。