「白いへび眠る島」 三浦しをん

白いへび眠る島
高校最後の年、悟史が久しぶりに帰省した拝島には今でも古いしきたりが残る。13年ぶりの大祭で高揚する空気の中、禁忌の怪物「あれ」が出ていると噂が立ち、悟史も見かけたような気がして心がざわめく。特別なつながりを持つ「持念兄弟」の光市とともに「あれ」の正体を探り始めるうちに、不思議なものに出会っていく。

島を仕切る「神宮家」にとってもこの祭りは大切なものだ。この島では長男以外は大人になると島を出るしきたりだが、神宮家の次男荒太はまだ島にいて、本来この時期によそからのお客は入れてはいけないのに、友人犬丸まで連れている。

小さな島で幼い頃から知っている2歳上の荒太に対して、あまり親しくした記憶のない悟史だったが、あるきっかけから荒太達とともに行動を開始する。彼らを信用できるのかわからないままの悟史だったが・・・

荒太は字の雰囲気から最初は体育会系のがっしりして無骨な印象の男の子を想像したが、実は病弱で柔らかい感じだった。友人(ということになっている)犬丸との関係も一緒にいてお互いリラックスしている様子が感じられていい。文庫には書き下ろしの「出発の夜」でふたりの出立の様子が出ているが、本来なら島を出るなんて考えられない立場のはずの犬丸があっさり荒太に付いていくことを選び、荒太自身もそれを嬉しく受け止めて希望の感じられる終わり方だった。でも彼らはこのあとどうなるのかしら?
霊感の強い荒太がいろいろな事件を解決するなんて感じで続きの物語ができたらいいのに。