「人のセックスを笑うな」 山崎ナオコーラ

人のセックスを笑うな
磯貝の通う美術専門学校の講師をしているユリは、やる気のあるのかないのかわからないような、まったりとした所が生徒にも人気で、彼よりも20歳も年上の女性だが、ある日みんなの飲み会に彼女が参加したキッカケでつきあうようになる。
磯貝がモデルとなって絵を描いたり、食事をしたりデートを重ねたが、ある日彼女の家で偶然に夫と鉢合わせ、そのときは一緒に食事をしたりして、磯貝も彼女の夫に好感を抱いたりしていたが、なんとなくそのときがキッカケのように二人は疎遠になって、ある日突然彼女は学校を辞めてしまう。

「はずし」の会話が気持ちいい。
飲み会の帰り「JRでしょ?」と聞かれた磯貝は一緒に帰ろうとすっかり誘われていたつもりでいたら、「私、地下鉄」と言われたり、モデルのお礼に沢庵をくれた彼女に「自分で漬けたんですか?」と聞いたら「違うけど」とあっさり否定。

ユリは年もずいぶんと上で、皺もあり、おなかがぽこんと出ているし、剛毛だったりして美しくはなく、かといって料理も出来ず、掃除も不得手、ずぼらで、絵の先生なのにちっとも教えてくれるわけではなく、メールや電話にもめったに返事をよこさないという性格。なのに磯貝は彼女が好きで好きで、いわゆる美点ではなく、皺が好きだったり、おなかがでているのが愛しかったりする。人間て不思議だ。他の動物も欠点に惹かれたりすることはあるのだろうか?