「1ポンドの悲しみ」 石田衣良

1ポンドの悲しみ
30代の大人の恋が描かれている短編集。
なかでも私が気に入ったのは「十一月のつぼみ」だ。
彼女へのプレゼントの27本のバラを買いに来た芹沢に花束を作った英恵。芹沢は毎週花束を買いに来るようになる。世間話をしたり段々と親しくなっていく二人だったが、結婚記念日を夫に無視された話をする英恵に、芹沢は作ってもらった花束をプレゼントする。その花束にそれられたメッセージカードには・・・

芹沢は年下の男の子のひたむきでまっすぐな所と柔らかで大人なところのバランスがとてもよかった。

他に精神的な病を抱えた純粋な女の子と似つかわしくないバーで出会った慶司の話「スローガール」は、車で送ったときに彼女のお母さんが待っていたというところがとても印象的だ。「スターティングオーバー」は、男性依存症の真弓が一年間の男断ちとして、晴れて新しい年を迎える新年会で、美砂子は不倫に決着をつける決心をして、長い付き合いの男友達功成もまた自分の気持ちにけりをつける決心をする。希望を抱かせる話が最後に来て明るい気持ちで本を閉じる。こんな風に自分を思ってくれる人がいるのは幸せだ。