「イトウの恋」 中島京子

イトウの恋
中学教師で郷土部顧問の久保は、実家の屋根裏である資料となるべき手記を見つける。それは明治時代に東北や北海道をひとりで旅行していたイギリス人の女性探検家の通訳をしていたイトウのものだった。イトウの子孫で女性漫画家の田中シゲルに連絡をして、郷土部の生徒赤堀と三人でその資料でイトウの人生をたどっていく。自分の倍も上の女性IBをいつしか愛し始めた伊藤が、彼女の言葉や行動にいちいち喜び悲しみするさまが書いてある。途中で途切れている日記の続きを探して、糸口を求めて田中シゲルの小さい頃に別れた母を探して・・

伊藤亀吉の日記と現代の田中シゲルの生活が交互に進み、いつしか交差する。
亀吉がアイヌの通訳の青年と仲良くするIBにやきもちをやき、その反面自分にきついことを言ってくるのに落ち込んでいると、アイヌの青年に恋心を見抜かれ、でも彼女に嫌われてもいないだろうと言われる。「嫌いなら女はあんな態度はとらないから大丈夫」と励まされる。その場面はほとほと嫌がられたような描写だったので、亀吉とともに私も「へ〜、そうなんだ」と思った。