「薬指の標本」小川洋子

薬指の標本 (新潮文庫)
+「薬指の標本」私の勤める標本室では、あらゆるもの(恋人に送られた音楽や火傷のあとなど)を標本にする。経営者で標本技術師の弟子丸氏に送られた黒の靴は私の足にぴったりすぎて、このままでは足が飲みこまれると靴磨きのおじさんに警告される。私の薬指は以前サイダー工場で機械に挟まれ、サイダーを桃色に染めながら落ちていった。それ以来薬指の先はほんの少し欠けたままだ。ある日私は薬指を標本にしようと思う。
+「六角形の小部屋」ジムで見かけた一風変わった女性が気になり着けて行きうらぶれた建物の中にあったのは「語り小部屋」という六角形の小部屋。その中にはベンチとランプ。そこに入り一人で語るのだ。それを管理する女性ミドリさんと息子のユズルさん。いつしかそこに通うようになり、彼らとも交友を深める私に別れがやってくる。