「熱氷」 五條瑛

 

熱氷

熱氷

 

氷山ハンターの石澤は姉として育った朱音の突然の訃報でカナダから10年ぶりに

帰国をするが、彼女の遺児の光晴を誘拐され犯罪に巻き込まれる。

 

なかなか面白い。

主人公の石澤は安定感のある主人公然としており、大人でユーモアも

可愛げもあり信頼できる。ただ光晴のために犯罪も辞さない姿勢に

まわりがハラハラさせられる。

 

誘拐された光晴も途中から思いがけず危機的状況に拍車がかかり

ドキドキされされるし、真犯人が意外な人とわかりかけるところは

残念に思ったり最後まで飽きずに読み切れる。

 

映画「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」  アップリンク

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評判がすごくよかったので興味をひかれた。

アップリンクは初めて行ったがあんなところに映画館があったとは・・

小さな劇場だが椅子の座り心地は悪くない。

 

セルゲイ・ポルーニンというバレエダンサーのドキュメンタリーなのだが

個人的に映画でドキュメンタリを見たいといつもは思わないのだが

これは面白かったし、最後まで退屈しない。

 

もともとはロシアの田舎の普通の家庭に生まれたセルゲイが

世界的ダンサーになるにはたぐいまれなる才能以外にも

家族を挙げての協力と母親の強い意志があった。

おばあちゃんも父親も外国に出稼ぎに行き彼の学費を稼ぎ

母親は一緒に息子について都会に出ていき細々と暮らす。

 

セルゲイはどこの学校でも一番になり最終的にイギリスのロイヤルバレエに

留学するのだが、ここで疑問だったのはロシアでも十分に

いいバレエカンパニーがあるのになぜわざわざイギリスに行ったのだろう?

母親はビザがないため息子をなくなく一人で留学させることになったので

そこまでしてと少し不思議。

初めてロイヤルバレエ団の建物を見た彼がまるでハリポタのようと

感動してみたいなので、ロシア人にとっても壮麗なんだと驚く。

 

そして幼いころからの映像がかなり残っていたのもすごい。

手足がながく美しいのだが、なんてことはない踊りでも

すでに表現力がすごくて驚く。

 

自分のためにばらばらになった家族をいつか一緒に戻すのが

彼の望みだったのに両親は離婚することになり、

それをきっかけに彼はオセロをひっくり返したように

母親や家族を恨んでいく。

バレエでトップになっても心は満たされず、目標も失い

燃え尽き症候群のようになってしまったのが

ロイヤルバレエを退団することになった原因なんだろうか?

もう少しロイヤルバレエにいてほしかったな・・

 

帰国したロシアでは思ったような待遇も受けなかった彼だが

Take me to churchのMVが大評判になり、現在では俳優も

やっているようだ。

ヌレエフをやるという噂もあったのでそれも楽しみ。

 

それにしても彼のお母さんやおばあちゃんが若く美しいので

驚いた。

 

彼の踊りをみていて、心から「ボレロ」を見てみたいと思った。

やってくれないかな~

 

映画「何者」

 

何者

何者

 

 就活の闇みたいなものを見せつけられた気分でちょっとぞわ。

これも青春の1ページなのだろうが、見ていてつらい。

自分探しや成長の過程でもある。

 

「かっこよくない佐藤健が見たい」と健が選ばれたとどこかで読んだ気が

するのだが、確かにかっこよくない健が見れる。

私の就職時はもっと売り手市場だったからここまでではなかった。

 

ネット社会なだけあり、OB訪問した先でメアドを教えてもらい

twitterで検索してその人や周りの人をfollowして彼らの生活ぶりを知るなんてのも

すごくこわ~い。

この何気ない検索がギスギスする人間関係を描くきっかけになったりもする。

そして二階堂ふみ演じる女の子がまた心理をぐさぐさとついて健を追い詰める。

 

菅田将暉が劇中でバンドをやっていて歌うシーンがあるが

すごく自然でいい。歌もバンドらしい。

 

エンディングテーマの米津玄師はすごく好き。

聞いていてなんとなくスーパーカーを思い出した。

 

 

映画「ダンケルク」

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クリストファー・ノーランの作品は見たことがなかったが評判もよく

いつもなら興味のわかない戦争映画だがなんとなく見たくなってしまった。

 

音楽もずっと不穏なかんじで不安感をあおり、見ている自分たちも一緒に

逃げるような気になる。

ダンケルクのビーチは海は明るく真っ青でリゾートのような白い砂浜に

暗いイギリスの戦争映画を想像していたのにそこでまず違和感。

でも逆にそれがリアルな一面を感じる。

 

その後は気の遠くなるほど多くの兵士と圧倒的に少ない軍艦、

それでもやっと船出してもすぐに爆撃され、そこからまた逃げ次の船に

ほうほうの体で乗ってもまた爆撃の繰り返しで疲弊する。

 

極限状態でみんな我先にとなっている中ではそこまで地獄絵図にならず

秩序が保たれている方だと思った。それはやはりキリスト教徒だからという

のもあるのだろうか。誰もいなくても神は見ているの精神というか・・・

 

そんな中でもケネス・ブラナー演じる司令官はかっこよすぎだ。

まずあんな状況でも軍服をばっちり着こなし、みんなが弱気になっても

あきらめず。そして大方イギリス人が帰国のめどが立ったのちも

フランス人のために残るという・・(涙)

 

兵士を救うためにイギリスから遊覧船で駆け付けたマーク・ライランス。

彼も国のために立ち上がり危険を顧みずダンケルクに向かう。

かっこいい一般人の役なのだが、年相応に分別もありすばらしい。

彼の船に海から助けられた軍人が何人かいるのだが、その中のパイロットは

軍服の下にスーツを着ていてさすがイギリス人。

そしてマーク・ライランス売れっ子すぎ。

 

ここでチャーチルの演説の言葉が出てくるが、伝説ともいえる彼とも

一緒に働いたというエリザベス女王って本当にすごすぎる。

 

映画「ベイビー・ドライバー」

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ネットで評判が高いので見に行ってみることにした。

 

悲しい過去を抱える男の子が天才的な運転技術を買われ犯罪のゲットアウェイドライバーとして働かされている。子供時代の事故以来耳鳴りがひどく

でも音楽を聴いているときは気にならない。

ララランドのような犯罪映画と聞いていたが、確かにいたるところに音楽が使われ

始めのうちは小気味いいほどに軽快に展開していく。

警察とチェイスをする場面では、警察の車も相当すごい動きをしていて

アメリカの警察はあんなにすごいのかと思ったが・・

 

彼はデボラという女の子と出会い犯罪からは足をあらって真っ当な生活を

しようと思うが、昔のボスが放してくれずずるずると引き受けることに。

そんな中悲劇的な展開があるが最後はハッピーエンドなのもいい。

 

ボス役のケビン・スペイシーもすごくいい。

悪い男なのだがまるで父親のように感じるところもある。

彼が違うメンバーで犯罪チームを毎回セットアップして計画し、やらせるのだが

最後のメンバーは悲劇の始まりになった。

いかにも悪い男はやはり悪い男だったが、一見niceに見えた男が一番の引き金に

なったりする。

 

子供の時に両親を亡くした主人公のベイビーは

muteの黒人のおじいさんが養父で育ててくれたのだが、アメリカという国は

こんなおじいさんでさえも子供を養子にもらい育つという文化があるのだと感心した。

 

 

「ヘタな人生論より枕草子」 萩野文子

 

ヘタな人生論より枕草子 (河出文庫)

ヘタな人生論より枕草子 (河出文庫)

 

 サブタイトルには「美しい生き方ができる大人になるために」とあり

枕草子の各章を取り上げながら現代のOLたちが読んでも

読みやすく共感しやすい。

不機嫌な人はそれだけで迷惑だというのは、そんな昔からそうなのね

と当たり前のことを思い出す。

映画「SCOOP」

 

SCOOP!

SCOOP!

 

 福山雅治がいけてない中年パパラッチを演じ、新人記者の二階堂ふみ

面倒を見るように言われ、いやいや連れて回っているのだが、

彼女に説教するときのたとえ話がいちいち野球に例えるのが

おじさんらしいと言われ激しく同意するが、そのイメージは

少し前のおじさんという気がする。

 

芸能人の追っかけをしていて、なかなかスリリングな展開が続き

面白いのだが、気楽に見ていたら後半の展開にびっくり。

りりーさんって不気味なおじさんにぴったりだが、薬中で

あぶない人っぷりはとても演技と思えない。

嫌味な業界人とか怖いやくざとかでもぴったりだし

彼は意外にかなりな演技派なのかもしれない。

彼がこの役で賞をもらったもの納得だ。

 

雑誌の売り上げは芸能ネタ、グラビア、ラーメンなどばかりで

本当はもっと大きな事件を扱ってみたいと思っている気持ちが

ある編集会議中に思わずあふれ出るというシーンがある。

確かに来る日も来る日もそんなネタばかりだとふと正気に戻る

タイミングがあるのかもしれないと思うのだが、

そんな記者たちも出版社の社員ならエリートだったりするのかも

と思ったりして。ほとんどは契約や下請けなのだろうか。